コーポレートバンキングにおけるブロックチェーンは、実験段階から本番稼働の段階に移っている。ブロックチェーン活用のメリット(value)や、技術面などの実現可能性(feasibility)は証明されつつあるが、経済的な持続性(economic viability)という観点となると、まだ不十分だといえるだろう(例: 収益性を確保できるほどの大規模展開は、本当に可能なのか?)。本レポートでは、決済、トレードファイナンス、シンジケーローンの領域でブロックチェーンを活用する取り組みを12件紹介する。

この領域で他者を先行するプレーヤーたちは、既にPoC(概念実証)のフェーズを終え、パイロットプロジェクトや本番稼動といった段階に移行している。現在、本番稼働しているのは比較的小規模なプロジェクトばかりである。このうち大多数のプロジェクトは、メッセージや文書をやりとりする、要するにプロセスをデジタル化するプロジェクトである。そしてごく少数のプロジェクトのみが、デジタルアセットを活用して何らかのバリューをやり取りする取り組みを行っている。今後18か月は、サービスプロバイダーやエンドユーザーをこうした取り組みに引き込む重要な期間となるだろう。同時に、ブロックチェーンやDLT(分散型台帳技術)プラットフォームのプロバイダーは、アプリケーション・プロバイダーの一歩先を目指して、スケール面とスピード面の改善に熱心に取り組んでいる。
セレントは、各プロジェクトのもたらすメリット(value)や、技術面などの実現可能性(feasibility)、経済的な持続性(economic viability)、そして関係者たちの能力面をふまえ、以下の12件の取り組みを取り上げることにした。
•クロスボーダー決済関連プロジェクト (5件中3件が本番稼動中): Ripple, Stellar, IBM World Wire, JPM Interbank Information Network, Visa B2B Connect
•トレードファイナンス関連プロジェクト (6件中2件が本番稼働中): we.trade, India Trade Connect, TradeIX, Skuchain, Voltron, Centrifuge
•シンジケートローン関連プロジェクト (1件): Finantra社のFusion LenderComm
