インドのキャピタルマーケットにおける規制環境:当局間の縄張り争い
Abstract
先のユニット・リンク型保険(ULIP)をめぐる規制当局間の対立によって、インドの各金融監督当局が互いに連携するためのメカニズムの構築の必要性が浮き彫りとなりました。
セレントは最新レポート「インドのキャピタルマーケットにおける規制環境:当局間の縄張り争い」で、銀行、キャピタルマーケット、保険、年金、投資商品といった各分野を監督する様々な規制当局の役割を分析しています。レポートでは、管轄領域の重複をめぐる最近の様々な問題を取り上げ、これらの完全防止まではいかないまでも、最小限に抑えるための方策について論じています。
インドでは市場が急拡大するのに伴い、過去20年間にキャピタルマーケット(1992年)、保険(1999年)、年金基金(2003年)を管轄する規制当局が相次いで発足しました。このため、それぞれの監督当局の管轄領域が明確になっていません。PFRDA法案(年金基金関連)とFCRAの改正法案(商品市場関連)が棚上げされたままになっている背景には、こうした重要課題を解決しようとする政治的意思の欠如があります。その結果、管轄市場の監督に必要な権能を持つ当局がある一方で、適切な権限を与えられていない当局があるなど、分野による不均衡が生まれています。
出典:セレント
「インドでは規制をめぐる深刻な紛争が頻繁に発生しており、解決方法をできるだけ早く見つける必要があります。それがどのような方法になっても、それを策定するための専門的なノウハウに加え、政治的支援が不可欠となるでしょう」とシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
米国、EU、英国をはじめとする世界の主なキャピタルマーケットでは、信用危機を機に様々な規制改正を実施しています。この動きに鑑み、レポートでは同国が今後取り組むべき点として、①強大な監督当局を設置せずに当局間の連携を深める、②迅速な裁判制度を利用して紛争を速やかに解決する、③各当局の管轄領域を均等化する、④金融市場の各分野でコンセンサスの形成に向けた手法を開発する、⑤各市場間の規制を調整する―ことを挙げています。
このレポートは3図と1表を含む30ページで構成されています。