スワップ執行ファシリティ:市場の進化と規制強化
Abstract
2013年10月にスワップ執行ファシリティ(SEF)がスタートして以来、これらを通じて行われる取引は拡大しています。セルサイドとバイサイドの大手および中堅金融機関の多くは取引インフラをアップグレードするとともに、SEF、清算機関、その他の外部サービスプロバイダーとの接続性を向上させ、複数の当事者間で行われる新たな取引環境に備えてきました。
セレントの最新レポート「スワップ執行ファシリティ:市場の進化と規制強化」は、SEFの導入とそれが店頭デリバティブ市場に及ぼす影響について分析しています。セルサイドの金融機関は、リスクテイキング能力が低下しつつあります。金融危機と規制強化の動きを受け、セルサイドは取引インフラの縮小を余儀なくされてきました。バイサイドの金融機関を取り巻く状況もさほど変わりはありません。高い取引スキルを持つセルサイドのトレーダーが相次いで参入したことによる恩恵を受けたヘッジファンドもありますが、バイサイドの多くはSEFでの取引に必要なインフラの構築に苦労しています。
投資銀行は、もはやリスクテークモデルを採用しなくなっています。優秀な人材の多くが投資銀行からヘッジファンドに移籍するか、自らヘッジファンド立ち上げた結果、投資銀行では以前のような自己勘定取引やリスクテークを行えないのが現状です。そのため、銀行は市場参加者にそうした能力を与えるエージェンシーモデルを採用するようになっています。この結果、セルサイドの中堅プレーヤーやバイサイドの大手プレーヤーにとっては取引高を増やし、市場での存在感を高めるチャンスが広がったといえるでしょう。
「SEFを通じて取引を行う『多対多』市場は、より公平な取引の場となる可能性があります。中堅ブローカーは、店頭デリバティブ市場でより大きな役割を担うチャンスがあるでしょう」とセレントの証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
レポートでは、様々な市場参加者が担う役割の変化、エージェンシーモデルへの移行とそれがセルサイドおよび市場全体に及ぼす影響、リスク管理をめぐる課題、特に信用情報のハブの利用をめぐる懸念に焦点を当てています。その上で、規制の影響の大きさとMATが市場の成長に及ぼす影響を推測し、多様な市場参加者とシナリオを想定してビジネスチャンスを明らかにしています。最後に、様々な変化が国を超えてもたらす影響についても予測しています。
本レポートは同じテーマを扱ったシリーズの第1弾です。第2弾のレポートでは、各SEFが最初の数ヵ月間に取り扱った資産クラス別の取引高、市場構造の変化についても論じています。