転換期を迎えたコマーシャルモーゲージと テクノロジー
Abstract
米国では、向こう2~3年の金利上昇が避けられない状況下で住宅ローン残高の伸び悩みが予想される一方、コマーシャル(商業用)モーゲージ残高は好調な伸びを維持するとセレントは予測しています。
セレントの最新レポート「転換期を迎えたコマーシャルモーゲージとテクノロジー」 は、コマーシャルモーゲージ市場の動向、金利変動による影響と同分野における商品ラインの効率化とコスト削減の実現に最適とみられるテクノロジー利用法についてに焦点を当て、検証しています。
ここ2~3年は歴史的な低金利を背景に個人向け住宅ローン残高が著しい伸びを記録したのに対し、コマーシャルモーゲージ残高の伸びは比較的緩やかに推移してきました。「コマーシャルモーゲージは金利変動による影響を比較的受けにくい分野で、早期返済ペナルティが適用されます。また、そのしくみの複雑さから、一般に市場動向への反応は比較的遅いといえます。コマーシャルモーゲージ残高が急増した2003年でさえ、低金利がその原動力になったというより、緩やかな景気拡大と商業用不動産投資への関心上昇に拠るところが大きかったといえます」と、セレント銀行チームのアナリストであるクリスティン・べリーは述べています。
コマーシャルモーゲージ業界は今、変革を迫られています。市場拡大に伴い新たなテクノロジー導入の必要性が増すとともに、業界はマニュアルプロセス、システムの未統合、スプレッドシートの使用が蔓延する現状からの脱却を求められています。 コマーシャルモーゲージ取引は複雑で独自の特性を持つケースが多いため、ハイレベルなビジネスプロセスの自動化には限界があるものの、テクノロジーをもっと有効に活用できる分野もいくつか挙げられます。レポートに掲載したGEリアル・エステートのケーススタディでは、貸し手である同社がテクノロジーを導入することによって、スタッフを増員することなくポートフォリオの拡大および管理強化、全体的なサイクルタイムの10~20%削減、顧客サービスの向上に成功した実例を紹介しています。GEは業界のリーダー的存在であることから、他社も同社の成功に追随する可能性が高いとみられます。
コマーシャルモーゲージの貸し手である金融機関では今後の融資残高の増加に備えたテクノロジーの導入が不可欠となるでしょう。コマーシャルモーゲージは銀行にとって最も高い利回りが見込まれる資産であるケースが多いだけに、効率の悪さやデータの不整合などが決して許されない重要な製品ラインといえます。